なくなってほしくないもの [つれづれ]
無くなってほしくないもの
シネマート六本木
高砂飯店
紀の国屋
そしてアンナミラーズ
好きなものが詰まっていた場所がいつの間にかなくなってしまった。
これまでに数回、そのような経験をした。
永遠にそこに存在するものは、ほとんどないんだということを知る時がある。
シネマート六本木は、韓国映画を上映することが多かったのではないかなぁと思う。
大ファンの俳優が出る映画は全国の大型シネコンプレックスでかからないことが多かった。
調べて調べて、シネマート六本木にたどり着いた時のうれしさは忘れられない。
ガッツポーズ&観ることができるんだという高揚感。
少し早く着きすぎて、周辺を歩いて時間つぶし。
たしか、瀬里奈というステーキの老舗が近くにあった記憶がある。
私の推しの俳優さんと日本を代表するこのお店のステーキを食べてみたいよなぁ…なんてオソロシイ妄想をした。
2015年に閉館しているとのこと。
まったく知らなかった。
幼いころ、家族と行った中華料理店の高砂飯店は日野市にあった。
グーグルで調べると日野市多摩平にあったみたい。
母と一緒に行くことが多かった。
以前にも何度かここに書いたことがあるんだけど、フルタイムで働く母は、夕ご飯を作るのがめんどくさくなって私とパパっと外食して、父のご飯だけを作っていた日があった。
高砂飯店での思い出は母の注文の仕方一点のみ。
「エビの入った柔らかい焼きそば」
野菜、豚肉を炒めて片栗粉のあんでとろりと仕上げる。
麺は油で揚げたパリパリのではなく、うっすらとこげのある焼いたもの。
焼いた焼きそばの上にあんがかかっている。
エビ入りは多分、海鮮あんかけ焼きそばではないかな。
エビが入っていないのは五目あんかけ焼きそば。
この食べ物の本当の名前をだいぶ大人になってから知った。
私のソウルフードかもしれない。
高砂飯店のエビの入った柔らかい焼きそばの味を今、忠実に思い出せない。
でもおいしかった。
大好きだった。
その後の人生にエビの入った柔らかい焼きそば注文率が常に高いのは高砂飯店のせいです。
日野を離れて久しい。
1990年代に閉店したのではないかというブログを発見した。
前の職場は、来客の方からの差し入れが結構あった。
紀の国屋は定番中の定番。
おこじゅ、相国最中。
どれくらいいただいたかわからない。
一番好きなのはあわ大福だった。
今考えると、ここのはどれもずっしりと重量感があったなぁ。
箱からひとつ取ると手にずしっときた。
あわ大福は賞味期限が確か一日。
次の日になると表面の皮が固くなってしまう。
トースターで焼いても、チンしても前日の柔らかさは戻らない。
あわ大福を食べる時、あわ大福と勝負しているような気がした。
あんこも皮もめちゃめちゃ好みだ。
行く先々であそこも、ここも支店があるんだ、と思っていた。
たくさん店あるんだなぁと思っていた。
5月、閉店をニュースで知る。
例えば、5月に発表して《本年6月末日を持って》とかじゃない。
ニュースを聞いたその日が終わりの日だった。
無くなるならあと数日の間にあわ大福買いに行こうという選択肢もなかった。
少しして元社員さんたちによる復活の動きを知った。
復活したら必ず、二代目あわ大福を買いに行きたい。
そして今日、アンミラ高輪店閉店を知る。
もうアンミラは高輪店のみであるということも知る。
大きなケーキと薄いコーヒーで友達とおしゃべり。
高校、大学時代の私たちにはいくつかお気に入りの喫茶店があった。
イタトマ、イエスタディ、美味しい水、ノイズ。
アンナミラーズはなかでも最高峰の大人の店だった。
大学生のワンレン、ボディコンのきれいなお姉さんとか働きはじめのパリッとした社会人さんのカップルたちの中で、レモンパイとかチョコレートケーキとかを食べていた気がする。
見るもの、聞くもの、なにもかも初めてで、中学までの私の世界を一変させた大きなものが「喫茶店」、今のカフェの前身のこれらの店だったのだろうと今、思う。
渋谷、原宿、下北沢のアンミラに行く時は、背筋がしゃんとした。
同級生にバイトしている人がいた。
小柄でかわいくて、あの衣装、絶対に似合うと思った。
ファッションリーダー的な感じでいつもおしゃれだったし、何を着ても似合っていて、彼女が着ている服は少し経つと絶対にブームになるようなそんな雰囲気の人だった。
彼女の働く姿は見ていない。
溜池山王や青山の店は私にとっては大人過ぎて足を踏み入れたことがない。
もっと大人になってから、行っておけばよかったなぁ。
アンミラは代替地を模索しているのかもしれない。
再びアンミラが誕生したら、きっと行く。
シネマートも高砂飯店ももう一度行きたくても、行けなくなった。
行ける場所があるのなら、照れくさい青春を見つけに。
今度は後悔しないように。
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