クライスの思い出 [たべもの]
クライスの思い出
クライスという名前のコーヒーがあります。
小さいころにこういうコーヒーがあるということを知ったのだけど、存在を忘れたまま大人になりました。
そしてつい最近、クライスに再会。
クライスと私、今、親友になってます。
小学生の頃、私と母はある楽器にであったのです。
フルート。
ピアノの発表会でたったひとり、フルート演奏をした女の子がいて。
きれいな女の子だったのと、全員ピアノ弾く世界に、ひとりだけフルート吹いたっていうことで際立った印象が残ったひと時だった。
私から言ったのか、母が勧めたのか、そのあたりは覚えていないのだけど、しばらくしてからフルートを習うことになったのです。
母がどこかから教えてくれる人を見つけてきて、その人がうちにやってきて一時間くらい習ったんだった。
練習が終わると母がお茶を入れて持ってくるんだけど、ある時「先生、どうぞ」とコーヒーを出した。
普段からコーヒーだしてるし、別にいつもと変わらない練習後のお茶の時間と思っていた。
そしたら母が「先生、コーヒーどうですか」とかなんとか尋ねたの。
「このコーヒー、実はインスタントなんです」と言う。
コーヒーはドリップ式でいれていたと思うのに、なんでその日に限ってそんなものを出したのか、しかもネタばらしもして…と私は幼いながら心がワサワサ、ママどした?と言葉もなくそこにいた、と思う。
すると先生が「え?ほんとですか。ネルドリップでいれたみたいに美味しい」というではないですか。
母は台所にとってかえると瓶を持って戻ってきて「クライスっていうんです、これ」って見せていた。
ひとしきり、まさかインスタントだったとは…みたいな会話があったと思う。
母は今でいう「ドヤ顔」で、美味しいでしょう、みたいな話をしていたと思う。
そしてそれきりでクライスは終了。
我が家の定番になったとか、ない。
母も多分、一回どこかで手に入れただけで、リピートはなかったと思う。
誰に教えられたのか、どこで買ったのか、すべて謎。
その時、私はまだコーヒーは飲んだことがなかった。
母も飲ませなかったし、クライスがどんなにうまくても味見をしたいとも思わなかった。
そして月日は流れ、一か月くらい前にカルディでクライスを発見した。
KREIS
こんなつづりだったんだ。
ドイツのコーヒーやね。
お、カフェインレスがあるやん。
少々、お高いのね。
母のドヤ顔やフルートの先生の美味しい美味しい言ってたことが一気によみがえる。
ものになるのかならんのかまったく未知数のフルートを練習していた小学生が、めっちゃコーヒー好きなおばちゃんになった2023年、買わないという選択肢はなかった。
クライス、美味しいのである。
インスタントとは思えないと言った先生の言葉も納得した。
母がカフェインレスを買ったのかはわからないけれど、たくさん飲みたい私にはこれがとてもありがたい。
だんだんと思い出してきたのだけど、母のクライスは、赤のクライスだったと思う。
レギュラーというのか…最もスタンダードな商品ではなかったかなぁと。
カフェインレスのクライス、めっちゃ美味しいよ。
母にも、買ってみた。
このコーヒーと先生の話、覚えてる?と聞いたら、覚えてなかった。
フルートはその後、思わぬ形で私の人生を大きく変えることになるのだけど、小学生のあの時、どういうつながりで我が家に教えにきてくれたのか、母も忘れているあの先生にお礼を言いたい。
クライスももう一度、ごちそうしたい。
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